もうひとつの自治体のカタチを求めて

京都府議会海外視察で、「自治体のあり方」について見てきたリポート(概略)です。2004年10月

飛行機からフランクフルト国際空港近郊の住宅

財団法人自治体国際化協会パリ事務所(フランス)

 フランス全土で約3万6千あまりのコミューン(基礎的自治体)の人口は、その9割が2000人未満であり、1971年から国による合併促進が進められましたが、反対によるすすまず、その後は合併がおこわなれるケースがまれとなっています。他方、基礎的自治体はそのままに、それぞれ連携した「広域行政組織」(事務組合、コミューン共同体、都市圏共同体、大都市共同体など)が、多様に展開され、それぞれの自治を尊重しつつ、円滑な運営が行われるよう、財政措置や権限をもちながら、改革がすすめられています。

 京都府が国と一体となり財政を理由に合併を強制する姿とは違い、住民自治、団体自治それぞれが長い歴史に裏付けられた強いものであることが印象的でした。

パンタン市役所(フランス)

 人口5万人の小さな都市で、1700人の公務員(向日市人口5万2000人で公務員543人)で学校や交通機関もすべて自治体が責任をもっています。そして45%が公営住宅で、「将来もこの割合を維持したい」(フィリップ氏)と、自治体施策を胸をはって述べられていたのが印象的でした。

ストックホルム州警察(スウェーデン)

 「いかに警察が市民に近づくか」をテーマに警察改革が行われ、「平穏の確保」と「犯罪の抑止」を柱に、例えば、犯罪者が再犯を防止するため、市民と連携組織をつくり新たな職や居住場所など、さまざまな社会復帰策の実施や、市民と協力した犯罪抑止連携チームが設置されるなど、「犯罪の取り締まり」の警察でなく、犯罪がおきない社会づくりのために、警察は最善を尽くすという観点が貫かれていることにおどろいた。なお、2004年のスウェーデンの殺人件数は4件らしい。極めて犯罪件数が少ないのが特徴です。

エッフェル塔ライトアップ

ストックホルム市役所(スウェーデン)

市会議員定数101議席のうち、53名が女性議員であり、4年に一度改選される。市の実務を掌握するのが助役ですが、野党側助役という制度があり、12名の助役のうち4名がその任にある。また助役を出していない野党からもオブザーバー助役制度がある。これらにより、民主主義がバランスを保っているとのこと。また、市政と財政は毎年丁寧に情報公開され、その結果4年毎の選挙で、市民的審判で政権が変わっているとのこと。自ら収めた税金が何に使われたか、市民が正当に監視するという民主主義と男女共同参画が一定実現されていることが伺えました。また、それを支える議会制民主主義のルールと議会の権能・権限の大きさに驚きを覚えました。

FESフランクフルトごみ処理会社(ドイツ)

 ドイツのゴミ行政は有名な「デュアルシステム」で、FESは、フランクフルト市が51%出資しゴミ処理およびリサイクルを担っています。

 町のあちこちに緑色(紙類)、茶色(生ゴミ類)、黄色(包装材)、グレー(分別できないもの)などに色分けされたコンポストがあり、またそれ以外にガラス回収コンテナなど500Mおきに配置され、家の敷地内まで入って回収・リサイクルされていました。ゴミ処理場は、65万人を擁するフランクフルト市のゴミ処理がこれでできるのか?と思われるほどの小さい生ゴミ処理施設でしたが、分別が徹底されているため、十分だそうで、しかも処理したゴミは堆肥として農業者に販売され、また発酵ガスは電力にして売電しているとのことで、徹底した取り組みに驚きました。

カールスルーエ市役所(ドイツ)

 LRTで有名なカールスルーエは、町中にLRTが走っている。しかも、周辺120の自治体で路線ネットワークを構成し、市内への乗り入れを乗り換えなしでできるようLRTの高速化、相互乗り入れ、郊外駅の無料パークアンドライド化(6000台)、電車優先信号整備で信号待ち時間を3分の1に解消、などが徹底して行われ、年間1億7千万人を輸送するまで発展しています。

 新路線の拡張については、「高くて乗らないより、安くして多く乗るほうがいい」「人が駅に来るのでなく、駅が人に近づくのをコンセプトにしている」との話は、今日における公共交通のあり方を示唆するものとして、感激しました。